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よわこ台風

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 08 21st, 2009   Yowako  

よわこの日記061
今日も、わたしはよわこです。
今日は父と、母と、いっしょに海へ行きます。去年も行った、千葉の名勝・仁右衛門島(ニエモンジマ)!バスタオルに水着に水中メガネ、そうそう、岩場で便利な磯タビも忘れないようにしなくちゃ。 わーい!タイだ、イセエビだ!今年も民宿で、お魚いっぱい食べられるんだわ! …ところが。 母が「これから夜にかけて台風が上陸するんですって。危ないから海は中止ね。」 …え? 父の顔を見ると、 「そうか…台風じゃしかたない。仕事しろってことだな。」 …うっそー。だって雨は降ってないし、曇ってるけど風はおだやかだし、ほんとうに台風が来るの?誰かのカン違いじゃないの?
インターネットで写真を見たら、たしかに台風の渦巻きが、太平洋の下から回転ノコギリみたいに向かってきています。『今日は大雨がふるので注意』と書いてあります。なんだか、だまされてるような気分。ちぇ。せっかく楽しみにしてたのに…。しかたないから宿題をしました。けど、お天気が気になって宿題がはかどりません。30分ごとに窓の外を見て「雨ふらないね~」父と母もいっしょになって「雨ふらないね~」 とうとう夜まで雨は一滴もふりませんでした。

ニュースを見た母が、「くるはずの台風が、Uターンして消えちゃったんだって。まるでよわこ台風ね。」 しつれいな…!「ひと騒がせだったけど、どこにも被害がなくておりこうな台風だわ。」 …そうだけど。 『海水浴中止』だって、りっぱなヒガイだと思います。「海行けたのに…」がっかりしていたら、父が「これを使いなさい。」と、怪しげな袋を出しました。なにこれ。中に白い粉が入っています。「おとうさん!ま、まさか、これは…犯罪行為では!」「何言ってんの。ラベルを見てごらん。」…見たら『バス・ソルト』と書いてありました。ああ、びっくりした。お塩だったのね…。
その夜は、父が仕事でもらってきた『ヨルダンの死海の塩』を、お風呂に入れて入りました。お肌がすべすべして、気持ちよかったです。死海ってどんな海なんだろう。海水浴とまではいかないけれど、まあいいや!
お風呂場の窓から、きれいな月が見えます。明日は晴れそう…きっと海日和だ… ちぇ………。 海ではなくて大井町の『つるかめランド』でおさしみを買って、3人で食べました。やれやれ。

スキスキ鳥

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 07 29th, 2009   Yowako  

よわこの日記60
今日も、わたしはよわこです。
朝早く、聞きなれない鳥の声で目が覚めました。 スキスキスキスキ!… スキスキスキスキ!…  「好き好きだって、かわいーい!なんて名前の鳥かしら?」
同級生の鳥博士、コウノスくんにメールしたら、”それはきっと、シジュウカラだよ” と返信されてきました。
シジュウカラ …そんな鳥がいるとは!このへんはいつもカラスがいっぱいいて、朝はカーカーうるさいです。ときどき犬が怒って「ワンワン」吠えると、真似して「カンカン」鳴くのもいます。犬をバカにしてるみたい。 …カラスって頭はいいけれど、性格わるいかも! 
”鳥は何のために鳴くんだろう?” コウノスくんにもういっぺんメールしたら、こんな記事を送ってくれました。
キンカチョウという小鳥は、父鳥が チュチュルチュッパ! チュチュルチュッパ! と、リズミカルに歌いながら子供たちに『求愛の歌』を教えるそうです。上手に歌わないとメスたちが相手にしてくれないから、お手本を歌って聞かせるのです。ある実験チームが、ヒナ鳥たちを防音された箱に隔離して育てたら、歌を教わらなかったヒナは、大人になっても パヒパヒ パヒパヒ と、へたくそな鳴き方しかできませんでした。へたくそな鳥たちは、次に生まれた子供たち(第1世代)にへたくそな歌を教えました。すると子供たちは、チューイチューイ チューイチューイ  と、少しだけうまく歌ったのです。少しだけうまくなった鳥は、次の子供たち(第2世代)に少しだけうまい歌を教えました。すると子供たちは チュ チュ チュイッパ! と、さらにうまく歌いました。同じように第3世代、第4世代になると、ほとんど野生に近い、ビート感のある歌に戻ったそうです。
…これって、DNAの中に上手な鳴き方が設定されているってことかしら?歌がうまくないと結婚できないなんて、鳥の世界もタイヘンなのね… 父さん鳥があんまり上手だと、娘のキンカチョウは耳がよくなって、なかなかお嫁にいけないかもしれないわ!

シジュウカラは、どんな鳥なのだろう…きっと可愛らしい小鳥にちがいない。 「そうだ!明日の朝、早起きして見てみようっと!」
翌朝、ベッドの上で待っていたら、聞こえてきました!あの声です。 スキスキスキスキ!… スキスキスキスキ!… おどかさないように、カーテンをそーっと開いて外をのぞいたら…… うっそー。スキスキスキスキ…って、木の上で、猫のクアチが、シジュウカラの真似して鳴いていました。やれやれ!

走るナメクジ

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 07 10th, 2009   Yowako  

よわこの日記059
今日も、わたしはよわこです。
梅雨どきは、ジメジメ湿っぽい。学校から帰って、シャワーを浴びようとお風呂場に行ったら… ややや!体長5センチくらいのナメクジが浴槽にはりついていました。うえ~。これはいったい、どこから入ってきたんだろう。お湯がかかると迷惑だろうから、外に捨てなくては。割りばしでやっとこさ剥がして、ティッシュにのっけて玄関へ。ドアの外の植え込みに捨てました。ちょっとだけ触った手が、ネバネバします。うえ~~~。手を洗って麦茶を飲んで、気を取り直して今度こそシャワーを浴びようとお風呂場に行くと… ややややや!またしても! 浴槽の同じところに、ナメクジがはりついています。色も大きさもそっくり。 なぜ?なんで~???
玄関の植え込みをのぞいたけれど、さっき捨てたはずのナメクジがいません。 …ということは、風呂場にもどったということ…? まるで手品の瞬間移動だわ。 もしかしたらナメクジの正体はイチローみたいに足が速い生き物なのかも! もう一度実験してみようと思ったところに同級生のうらこちゃんから電話がかかってきて、お喋りしているうちにすっかり忘れてしまいました。あとでお風呂場に行ったけれど、ナメクジはもういませんでした。
やれやれ!今度はどこに瞬間移動したのだろう。

クアチが行方不明

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 25th, 2009   Yowako  

よわこの日記58
今日も、わたしはよわこです。
学校から帰ったら、猫のクアチがいません。いつもなら、玄関にトコトコ迎えにくるのに。どこかで、すねて隠れているのかしら?前回の日記で、クアチがアルマーニを食べちゃったと思ったわたしが、「クアチのバカ!おまえみたいな食いしん坊は、もうつきあいきれないわ!」と、きつく怒ったのです。
「クアチ~、ごはんだよ~。」優しい声で呼んだけれど出てきません。大好きなカツオ節の袋を振って、シャカシャカ鳴らしましたが、出てきません。これは絶対おかしい!…もしかしたら、家出しちゃったのかも!どうしよう…こういうときは冷静に考えなくては…家出なら書きおきがあるはず。どこかに書きおきはないかしら?足もとを見ると、クアチのお皿の上にびっしょり濡れた雑巾がかぶせてありました。「これは…… 『ぬれぎぬ』って意味だわ!やっぱり!」
クアチが家出したと思い込んだわたしは、急いで探しにでかけました。「クアチーー!クアチーー!」呼びながら家のまわりをぐるぐる回って、五反田から大崎、品川駅まで歩いてもどってきましたが、見つかりません。うそ~。今まで外に出たことなんてないのに、クアチ、いったいどこに行っちゃったの?
日が暮れてきました。すぐそばの駐車場でカラスがギャアギャア鳴いています。夕暮れどきって、なんて心細くてイヤな時間なんだろう。暗くなって、車に轢かれたらどうしよう…いいえ、そんなこと絶対ないわ!クアチのばか。もう二度と会えないかもしれない…そんなことはないと何度打ち消しても、心配で涙がこぼれました。昨日まであたりまえに毎日一緒にいたのが、これで永遠に会えなくなるなんて…、幸せが壊れるのって、薄焼きせんべいみたいに簡単なものなのね。
頭の中を、思い出が逆回転で再生されました。クアチは5年前、駐車場の車の下にうずくまっていました。野良猫同士で喧嘩して、逃げ込んできたのです。顔中傷だらけで、ウーウーうなっていました。あのとき、わたしがカツオ節をてのひらに乗せてそっとさしだしたら、車の下からおそるおそる出てきて、カツオ節の袋ごとくわえて、がつがつ食べたんだったわ。…そうだ!
わたしは駐車場に入りました。金網を包囲するように、カラスがずらりと並んでいます。夕食の獲物を見はってるみたい。わたしはよつんばいになって、車の下をのぞきこみました。…いました。デブのクアチが、小さくなって震えています。こんなに弱々しいクアチを見るのは初めて。家ではイバっていても、外ではひよわなお坊ちゃまなのね。「うたがってごめんね。一緒に帰ろう。」「……ふにゃああああ!」クアチはわたしの胸に飛びつきました。家に入ると、カツオ節を袋ごとがつがつ食べて、いつものようにパソコンのキーボードの上にかぶさってぐーぐー寝てしまいました。
なんのことはない、家からたった8メートルくらいの家出でした。ああよかった。やれやれ!安心したら、なんだかだまされたような気分。…幸せって、そういうものかしら。

アルマーニが帰ってきた!

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 05 27th, 2009   Yowako  

よわこの日記 57
今日も、わたしはよわこです。
明日は数学のテスト。今夜は机に向かって勉強です。ええと、2次関数の軸の方程式は x = …うー、ネムイ。数学の教科書って、わざとムズカシイ日本語で書いてあるみたい。因数分解、連立不等式、正弦定理、余弦定理、加法定理、微分係数、導関数、不定積分、複素数、共役複素数 …『数字』よりも先に、『漢字』から「いちげんさんお断り」って、もんぜんばらいされてる気分!
文句を言いながら問題を解いていたら、目の前を茶色い虫がパタパタ飛んできて、パジャマの袖にとまりました。ぎゃああああああ!…ゴキブリかと思ったらそうではなくて、蛾でした。あわてて払いのけたら、蛾は電灯の下をくるくる回って、今度はパジャマの左胸のところにとまりました。いやーん、ずいぶん人なつっこい蛾だわ!
…そのときです。わたしはハッと思いました。 「…もしかして…おまえはアルマーニ?」
つい先月、4匹のアルマーニを公園の桜の木に捨ててきたばかり。まさか、その中の1匹が帰ってきたのでは…?アルマーニは茶色いイモムシの呼び名です。母がもらった花束にくっついてきました。茶色いイモムシはふつう『蛾』になるから、『GA』というジョルジオ・アルマーニのロゴマークにちなんで名前をつけました。
わたしはノートに、 x = アルマーニ という等式を書きました。すると蛾は嬉しそうにパタパタ飛んで、ノートの x の上にふわりととまりました。「…やっぱり!おまえはアルマーニなのね!」 …思わずハグしたかったです。うっそー、信じられない!あのちいさなイモムシの赤ちゃんが、立派な蛾になって会いにきてくれるなんて!…まるで『母を訪ねて三千里』のマルコみたい!「よくきてくれたね…これからはずーっと一緒だよ!」…アルマーニとの再会が嬉しくて、わたしは眠れませんでした。教科書の方程式に羽がはえて、頭の中をひと晩じゅうパタパタ飛んでました。
次の朝、目が覚めるとアルマーニの姿が見えません。ベッドの下も机の裏も、部屋中探したけれどどこにもいません。猫のクアチと目があったら、クアチが目をそらしました。「…もしかして…クアチ…アルマーニを…た…た…た…」 …たしかめるのが怖くて、それ以上聞けませんでした。数学のテストは、またしても惨憺たるものでした。
やれやれ!

機械とおしゃべり

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 05 20th, 2009   Yowako  

よわこの日記56
今日も、わたしはよわこです。
連休におばあちゃんの家に行きました。おばあちゃんは電子レンジがピーと鳴ると「ハイハイ、わかりましたよ。」 冷蔵庫のドアが開けっぱなしでピーピー鳴ったら「ハイハイ、ごめんなさい。」洗濯機が洗濯終えてピーピーいうと「ハイハイ、今行きますよ!」 …おばあちゃんたら!機械にいちいち返事しなくてもいいのに…。
家に帰ったら、父の部屋から話し声が聞こえます。のぞいて見ると父のほかに誰もいません。どうやらパソコンの調子がわるいみたい。「なんで~?!  なんで動いてくれないの~?」  …お父さんたら!『2001年宇宙の旅』のHAL(喋るコンピューター)じゃあるまいし… 機械に聞いたってわからないのに…。母の部屋の前を通ると母は5月23日のライブのハガキを印刷していました。ライブはもうすぐなのに間に合うのかしら…。旧式のプリンターの印刷する音が「ジィィィィ、サボッテル、サボッテル!…ジィィィィ、サボッテル、サボッテル!」と聞こえます。「うるさい!サボってて悪かったわね!」 …お母さんたら!機械にやつ当たりしなくてもいいのに…。 同級生のうらこちゃんのママは、車のナビとお話するそうです。機械の女の人の声が、「300メートル先を右折してください」とか言うと、必ず「やだ!」って言って、まっすぐ行くんだって。 なんのためのナビだかわかんないそうです。やれやれ!
映画の『ターミネーター』は2029年から送り込まれたサイボーグ。今から20年後の世界です。『2001年宇宙の旅』の年はとっくに過ぎたし、続編の『2010年』は、もう来年。人間が機械に支配される日は近いかもしれない…。今だって高速道路の料金所や、駅の券売機や、町には喋る機械がいっぱい。みんな知らないうちに、機械とお喋りしてるみたい。ヤダヤダ、わたしは気をつけようっと!
そのとき、わたしの部屋で携帯が♪ピリピリピリ… と鳴りました。 「ハイハイ、今出ま ………あ!」

わがままバラ

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 05 05th, 2009   Yowako  

よわこの日記 055
今日も、わたしはよわこです。
あたたかくなったら、ベランダの植木鉢がポンポンと花を咲かせました。ラベンダー、ローズゼラニウム、ガザニア …みんな母がもらってきた鉢植えです。
「よわこー、お水やっといてねー!」 …またか。母は忙しくて、気が向いたとき水をやるだけ、ちっとも世話しません。うちにもらわれた子はかわいそう。生き残るのは大変だろうに、エライわ!みんな、自立してるのね!…と感心していたら、ひとつだけ、つぼみのままぐったりしている鉢がありました。駅前のスーパーの新装開店でもらった、ちいさなバラの鉢でした。
「あたくし弱いんです。」 …バラのつぼみが言いました。「見てください。こんなにお肌がカサカサ。もしもお水をくださったら、きれいに咲いて差し上げられるのに…」わたしはあわてて水をやりました。すると、みるみる元気になりました。次の日見に行くと、またしてもバラがぐったりしています。「あたくし病気なんです。」と、つぼみが言いました。「もうだめ…。もしもスプレーしてくださったら、きれいに咲いて差し上げられたのに…さようなら…」あわてて殺菌剤を買ってきてかけてやると、もとどおり元気になりました。次の日も、バラはやっぱり元気がありません。「…ガラスに映るあたくしの髪はボサボサ、なんてみすぼらしい身なりなんでしょう!」わたしは枯れた葉っぱを取って、余分な枝をカットしてあげました。そして次の日も。「ほんのたまにでいいんです。ごちそうが食べられたら…あなたはご存知ないかもしれませんけど、花を咲かすのって、とても疲れることですのよ。」
…遠回しに命令するタイプみたい。バラはわがままって『星の王子さま』に書いてあったけれど本当ね!しかたなく栄養剤を買ってきて、鉢にのせてやりました。 すると…… ついに花が咲きました。わーい!オレンジ色の可愛い花です。「あたくし、どうかしら?」「とってもきれい!」ホメてあげると得意になって、次々咲きました。「もしも、明日もきれいって言ってくださったら、明日もきれいに咲いて差し上げると思うわ。」「ハイハイ。」 …ほんとうに手のかかる子!だけど、ベランダが明るくなって、めでたしめでたし。ところが。バラに刺激されたのか、それまで静かだった花たちまで、あれこれ要求をはじめたから大変。「私の場所は、すぐ日陰になるので風邪を引きそうなんです。」「私はアレルギー体質で、ローズゼラニウムさんの匂いが苦手なんです。」「あら、あたしだってラベンダーさんの匂いはキライよ!」 花たちが喧嘩しないように、一日かかって鉢を並べ替えました。
…やれやれ、実はみーんな、わがままだったのね。 「よわこー、コーヒーお願ーい!」 ……母も!

アルマーニ軍団

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 21st, 2009   Yowako  

よわこの日記 54
今日も、わたしはよわこです。
目が覚めたら、鼻の先に茶色い糸クズのようなものがモゾモゾ…よーく見たら、イモムシです。ぎゃああああ!…そのときキッチンから母の悲鳴が…「きゃあ~~~!冷蔵庫にイモムシが這ってる~!」父の部屋からも…「きゃあ~~~!パソコンのdeleteキーの下から、イモムシが出てきた~!」猫のクアチまで…「うにゃにゃにゃにゃ~あ!(ペットフードの皿の中にイモムシが!)」 …なんと。あちこちイモムシだらけでした。
いったいどこから?ベッドの上に、ゴマ粒くらいの黒い糞が、点々と落ちています。たどっていくと、リビングまで続いていました。イラスト展のとき届いた桜の花のアレンジメントが、枯れたままおいてあります。「おかあさんたら、ずーっとほったらかし!きっと、桜の枝にくっついてきた虫が、歩き出したにちがいない。」 みんなで這い回って、イモムシをつかまえました。クッキーの空き箱に入れて、わたしが近くの公園に捨てに行くことになりました。
箱をのぞくと、茶色いのが4匹。体長2.5cmくらいで、丸まったり、伸びたりしています。うえ~、はやく捨てよう!母はむかし、花束についてきたイモムシに『アルマーニ』って名前をつけて飼ってたことがあります。わたしが、「アルマーニは蝶ちょになるの?」って聞いたら、「いいえ。茶色いイモムシは、だいたい蛾になるのよ。」って言ってたっけ。ほんとかな…どんな蛾になるのかな…アルマーニがその後どうなったか覚えていません。
公園の桜は、もうすっかり葉桜になっていました。根元にばら撒こうとしてしゃがんだら、地面にアリがうようよ。ごちそうをさがして歩いてるみたい。空にはカラスがいるし、外の世界は弱肉強食…キビシイのね!家の中では脅威だったイモムシたちが、ここではちいさく弱々しく見えます。わたしは、桜の木のコブのくぼんだところに、アリに見つからないように、イモムシをそおっと捨てました。イモムシはびっくりした様子で、あちこちに這いはじめました。「立派なガになってね。」 …なんだか優しい女の子になったみたいで、気分よかったです。
次の日、クラスメイトのコウロギくんにその話をしました。コウロギくんは虫博士。「そのイモムシは緑色?茶色?」「茶色。」「じゃあ、キバラモクメキリガではないな…棘や角は?」「ない。」「う~ん、それじゃトビモンオオエダシャクとも違うな…ノコメトガリキリガか、シロシタバかも。」スゴイ。異常に詳しい…。「よわこちゃん、むやみに虫を捨てないほうがいいよ。」「え?…なんで?」「ヨトウムシだと菜園を荒らすし、コスカシバだと大変だよ。大量に発生して、桜の木を枯らすかもしれないんだから。」 …ガーン!わたしのせいで公園の桜が枯れちゃうかもしれない。どうしよう!心配で、ドキドキしてきました。「今回は大丈夫だと思うけど。」って、コウロギくんは言ってくれたものの、なんだか急に自分が無知でおせっかいな女の子に思えてしまいました。…やれやれ、虫を助けるのもムズカシイです。