あちこたねぇ
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よわこの冬休み

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 01 05th, 2011   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
新しい年になりました。今年はどんな年になるのかしら。…平和でありますように!
去年はおじいちゃんが入院してタイヘンでした。無事退院できたけれど、介護度2 から 5へ、いっきにアップ。おばあちゃんひとりでは無理なので、母は実家に単身赴任です。
父は動物園のペンギンやカピバラの撮影で忙しいし、年末の大そうじはわたしがしなくてはなりませんでした。ちぇ。冬休み、お友達はみんなスキーに行ったり、代官山へお買物に行ったりしてるのに、わたしひとりトイレのおそうじです…。まるでかわいそうなシンデレラ。でもきっと、『それはそれはきれいな女神さま』が現れて、わたしを美しい女の子にしてくれるにちがいない! …ところが。「キレイじゃなくて悪かったわねー」と現れたのは、女神さまじゃなくて『トイレの花子さん』でした。ひえ~~~~!
「うらめしやー、呪ってやるー」「どどどどうして!」「トイレが汚い祟りよー」「やめて!きれいにするから!」「じゃあ、はやくおそうじしてー」「は、はい。」 おそるおそるブラシで便器を磨きはじめましたが、手が震えてうまく磨けません。花子さんは腕を組んでじっと見ています。じれったそうにウズウズしながら、「そんなんじゃだめー」とか「腰に力を入れてー」とか、いちいちうるさいです。女の子というよりおばさんみたい。気が散るので無視してたら、ついにブラシを取りあげて、「いーい?便器はカーブにそって、こうやって磨くのー。見てなさーい!」と手際よくゴシゴシこすりはじめました。すると、あっという間にきれいになりました。
「すごーい!お見事!華麗なフォーム!」「ふん!だてに長年ユーレイやってないわよー。学校のトイレは清潔にしなくちゃー。」「あの…ここはわたしの家で学校じゃないんですけど。」 すると、「え。…うそ!また不法侵入しちゃったー!あはは、ごめーん。」と言って、花子さんは煙のように消えていきました。ああ、こわかった。でもおかげでトイレはピッカピカ。新品のようです。…『トイレの神様』って、実は花子さんなのかもしれない。
やれやれ!今年もいろんなことが起こりそうです。

2011年

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 01 01st, 2011   Yowako  

よわこ
今年も、わたしはよわこです。どうぞよろしくお願いします。

宮原芽映 2011年のお知らせ

1/28(金) ライブ @横浜・CLUB SENSATION  » LINK

2/6(日) ライブ @中目黒・FJ’s  » LINK

3/3(木)~13(日) 音楽劇『わが町』 @六本木・俳優座劇場  » LINK

3/21(月)~27(日) イラスト個展 @横浜・吉田町画廊  » LINK

ライバルを探せ

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 12 29th, 2010   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
あんなに暑かった夏が嘘のよう!期末テストが終わって、もう冬休みです。
ベランダの花たちも、みんな咲き終わりました。けれど、小さなバラたちだけは、寒い日も元気に咲いています。バラって寒さに強いのね…と思ったら、理由はそれだけではありませんでした。
夏の終わり、バラの鉢がもうひとつ増えました。「バラさん、お友達よ。仲よくしてあげてね。」「…よわこさん。」「なあに。」「…あたくしがおキライだったのね。」「え…」「こんなにいっしょうけんめい咲いて差しあげているのに。ご不満なんだわ。」「なななんで…」「その子をごらんなさい。あたくしとそっくりな大きさ…なのにあたくしより若いだなんて、ひどいわ!まるであてつけよ!」「ち、ちがうの!おばあちゃんが腰が痛くてお世話ができなくなったんで、母がもらってきたの。で、わたしが世話をするハメに…」って、なんでバラに言いワケしなきゃならないの。
先輩バラの機嫌は、なかなかなおりませんでした。「新入りさん、あたくしの真似しないでくださる?」「…あたしの名前はロザリーよ。」「あら!…おほほ!『ロザリー』ですって!マリー・アントワネットの召使いと同じお名前ね。あなたにぴったり。」「おばさんこそ『ヘナ』なんてへんな名前。白髪染めと同じじゃない。」「オ、オ、オバサン?このあたくしにむかって!ゆるせない!よわこさん、こんな子かえしちゃってくださいな!さもないとあたくし病気で死んでしまいます。」「こっちこそ、こんなうるさい女ウンザリ。おばあちゃんのおうちに帰して。」 「ふたりとも!仲よくしないと世話してあげないから!!!」
……怒ったら、やっと静かになりました。
さて、それからがタイヘンです。毎日気をつかって、お水も栄養もホメ言葉も同じだけやらないと、何言われるかわかったもんじゃありません。「よわこさん、あたくしこれから咲きますの。ごらんになって!」「はいはい。」「あたしもよ!ね、見て見て!」「はいはい。」「よわこさん、あたくし綺麗でしょう~?」「はい、きれいきれい。」「あたしは?あたし!」
…張り合っているうちに、バラが満開になりました。おかげで、今年の秋はベランダがいちだんとキレイでした。
やれやれ。ライバルがいるって、いいことだっていうけれど本当なのね。浅田真央だって、キム・ヨナがいたからこそ美しく成長できたっていうし。わたしもライバルを探さなくちゃ。
…でも、わたしのライバルって?

さかなさかなさかな?

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 10 21st, 2010   Yowako  

よわこ
今日も、わたしはよわこです。
父にたのまれて、晩ごはんのおかずを買いにスーパーにきました。今日は少し暑いですが、中はひんやり気持ちいい。えーと、何を買うんだっけ…メモを見ると、サンマ、グレープフルーツ、ネギ、牛乳、…うえ~おとうさんたら、いったい何を作るつもり?
スーパーでは、いろいろな音楽が聞こえてきます。五反田の東急ストアは、なぜかマリアッチが流れていて、おじさんたちの巻き舌のかけ声がにぎやか。店員さんが、ソンブレロかぶって踊りながら出てきそう。おばあちゃんちの近くのマルエツは、よく聞くと男の人が韓流ドラマ風な甘いラブソングを歌っていますが、誰も聞いてなくてかわいそう。
大崎百反通りのライフに行ったときは、たまたまポイント3倍の日で、♪「ポイントポイントポイントポイント、さんばいさんばーい」って、しつこくリピートしてました。お店を出たあとも、「ポイントポイント…」とつい歌ってしまうので困りました。ベルリンから、母のお友達のトンマおばさんがきたとき、「日本の街はどこにいっても音が鳴って、なんてやかましいの!」と言っていましたが、ドイツのスーパーはちがうのかしら…。
魚売り場には、『おさかな天国』がリピートしています。 ♪「さかなさかなさかなー 魚を食べるとー あたまあたまあたまー 頭がよくなるー」のあの歌です。以前はどこのスーパーでも流れていたので、築地の魚市場へ親子で見学に行ったこどもが、「おかあさん、なぜここは歌が聞こえないの?」と言ったそうです。 『おさかな天国』を作曲した柴矢俊彦さんは、ジューシー・フルーツというバンドのギタリストだった人で、なんと母の古いお友達でした。歌っているのは奥さんの裕美さん。わたしはお会いしたことありませんが、母は毎年年賀状をいただいているんだって。あーびっくり!世界はせまい~♪ 『おさかな天国』は、一時『たらこ・たらこ・たらこ』におされてました。たらこを作曲したのは、ゲルニカの上野耕路さん。どうりで妖しげなマイナー調。母は、「ジューシー・フルーツとゲルニカの対決!」なんて喜んでいましたが、魚の方が種類がたくさんあって優勢みたい。
『さかな』も『たらこ』も、『だんご3兄弟』も、『メロンパンのうた』も、同じ言葉をなんどもなんどもくりかえすから、別に聞こうとしなくても、耳からはなれなくなります。そのうち『牛乳の歌』とか『納豆の歌』とか『こんにゃくの歌』とか『にんにくの歌』とか、スーパーじゅうの商品が歌いだしたらどうしよう…!トンマおばさんじゃなくたって、やかましくて耳をふさぎたくなるに違いないわ!
今日も魚売り場では『おさかな天国』が流れてきます。だけど、なんか、あれれ… 
♪「くじらくじらくじらー 鯨を食べるとー あたまあたまあたまー 頭をたたかれるー くじらくじらくじらー 鯨を食べるとー なかまなかまなかまー 仲間はずれさー」
「鯨は魚じゃないわ!」と言ったら、ピタリと止まりました。空耳かしら?
…やれやれ!

われ泣きぬれて…

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 08 04th, 2010   Yowako  

よわこの日記80
今日も、わたしはよわこです。
7月は暑かったです。だからというわけではありませんが、期末テストはさんたんたるものでした。けど、わたしだけじゃなかったみたい。担任のオダワラ先生が、怖い顔をしてみんなに言いました。
「おまえらー、なんだこの成績は!こんなことだから、『ゆとらー』などと言われて世間からナメられんだぞ!罰として、夏休みに現国の特別授業を行うことにする。」「え~~~!」みんなから、不満の声があがりました。「先生、俺たち、ゆとらーじゃないっす。」「そうです、世間からなめられたって、幸せならいいと思いまーす。」「夏休み、バリ島行くんで出席できませーん。」「あら、すてき!うちはハワイよー。」「だ、だ、だ、だまれ~~~!だいたいおまえらは (長いので省略)」
というわけで、みんなそれぞれ文学作品の研究発表をすることになりました。わたしの課題は、『石川啄木の短歌を一首選んで、解説すること』です。どどどうしよう…。みんなの前で発表するなんて!
うちに帰ったら、新潟から親戚のナスおじいちゃんが泊まりに来ていました。「おじいちゃん、おひさしぶり。暑くて大変ね。」「あちこたねー。笹ダンゴこうて来らったぞ。よわこちゃんは、元気じゃったかえ?」「それが、じつは…」わたしは、気が重い研究発表のことを話しました。「ふむ。石川啄木は、立派なええ歌人じゃ!啄木といえば、これがもっとも有名じゃな。」
 
『東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる』
 
これならわたしも知っています。教科書にものってるし。でも、知らない人が書いた短歌を解説しろと言われても、どうしていいかさっぱり。斉藤和義の歌ならわかるんだけど…。「おじいちゃん、この人なんで泣いてるの?」「さあ~、ひでえ貧乏だったか、女にふられたのかも知れんの。」「たはむるってどういう意味?」「遊ぶという意味じゃろ。この歌は、大きな海の風景が、だんだん小さく絞り込まれてゆくのがミソじゃ。」「そうか!まるでカメラのズームインね。」「浜辺で泣いとるだけなら誰にでも書けるが、最後に蟹を出すことによってレアレテーが生まれる。」「れあれてい?…わかった!リアリティのことね。カニじゃなきゃダメなの?」「ウニとたわむれても絵にならんじゃろが。」「ヤドカリは?イソギンチャクは?」「そりゃ、字余りじゃ。」「たまたまそこにいたのが、七五調にぴったりの蟹だったなんて、できすぎてる気もする。」「嘘でもええんじゃよ。詩的真実と言ってな、創作に限って、嘘は心を伝えるための手段なのじゃ。」「なるほど。」「これも、啄木の有名な歌ぞ。」
 
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻としたしむ』
 
「… わたしはこっちのほうが好きかも。」「ほう。どんげして?」「うーん、なぜかわからないけど、リアリティを感じる。それに母がよく、『今日はパッとしないから』と言って、突然お花を買ってくることがあるわ。」「そりゃええ、そんなら、この歌を発表せえ。」…あとで検索してみたら、石川啄木という人はとても貧乏で、なのに、友達が一生懸命かき集めて貸してくれたお金で芸者さんと遊んだり、結構ヒドイ人だったみたいです。そんなことしていたら友達がみんな偉く見えて当たりまえです。おじいちゃんによると、昔の天才たちは、だっちもしねえ(どうしようもない)やぼこき(ワガママな人)も多かったんだって。ロック・ミュージシャンみたいなものかしら。

いよいよ発表の日。わたしの番がきました。ナスおじいちゃんのおかげで、わたしは自信を持って教壇にあがりました。ところが、「友がみな」の短歌を黒板に書くと、みんながクスクス笑い出しました。あれれ、なんでだ~?見ると、オダワラ先生が真っ赤になって怒っています。「お、お、おまえは、そんなことだからゆとらー…うう、もういいっ、席に戻れっ!」え。な、なんで?なんで怒ってるの?せっかく研究してきたのに…。黒板を見たら、わたしはこう書いていました。
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻とたはむる』
し、しまった!間違えた!「したしむ」と書いたつもりだったのに、先の2首が頭の中で合体してしまったのです。
あー恥ずかしい、啄木さん、ごめんなさい…。落ち込んで帰ったら、ナスおじいちゃんが「どうじゃった?」と聞くのでわけを話しました。「うぉーっほっほー!そりゃあええ、傑作じゃ!妻とたわむる…むふふ。啄木の歌より、レアレテーあるわい!」
おじいちゃんだけは、とても大喜びでした。…やれやれ!

よわこの日記79
今日も、わたしはよわこです。
ついに新しい洗濯機が、家にきます。古いのが壊れたので、きのう父とビックカメラで買いました。乾燥機付きの素敵な洗濯機がずら~っとならんでいましたが、父が「今までと同じ大きさじゃないと置けない」というので、結局それは1台しかなくて、迷うこともありませんでした。真っ白でシンプルだけど、カワイイ洗濯機です。
新しいものがくるのはワクワクします。けれど、そこにあってあたりまえだったものがなくなるのは、少しサビしい気がします。古い洗濯機は、わたしが生まれる前からずーっとそこにありました。白い色がすっかり黄ばんで、なんだかみすぼらしい。はじめはきっと新品だったのに、ずいぶん長い年月働いてきたんだもんね。よく見ると、こんなところにも傷が…。 イケナイ!じーっと見ていると、情が乗り移ってしまいそう!あわてて目をそらしましたが、遅かった。情が移ったとたん、洗濯機が喋りだしました。
「よわこさん、長いあいだお世話になりました。」「…いえいえ。こちらこそ。」「20年もの間、私はここの家に置いていただきました。思いおこせば、よわこさんのオムツカバーからはじまって、パンツ、幼稚園のうわっぱり、体操着、学生服のブラウス、ご愛用の黒いルーズソックスも、ご家族の思い出とともにくりかえしくりかえし、洗ってまいりました。」「やめて。そんなこと言ったら、お別れがつらくなるじゃないの。」「初めてのブラジャーを洗った日の感動は、今も忘れません。たしかサクランボの柄…」「や、やめてってば!」「よわこさんの成長は、ここでご奉公する私にとって、何よりも楽しみでした。ですが、これも浮世の常。さだめに背き、引き返すは恥。私は役目を終えて、ひっそり消えていきます。」 …まるで篤姫の乳母ね。ところが、洗濯機はなかなかひっそり消えてくれそうもありませんでした。
「私のことは忘れて、みなさんどうかお幸せに。」「わたしたちも、あなたのこと忘れないわ。」「…ありがとう。でも、気休めはやめてください。新しいものが来たら、私のことなんて、みなさんすぐにお忘れになるでしょう?」「そ、それは…。」 きっとそうだ、と、わたしも思いました。「『小惑星探査機はやぶさ』は、7年働いてみんなから注目されて消えていきましたが、私は20年働いたって誰からも注目してもらえません。しょせん家電は家電。スターにはなれないのです。」「はい…。」「今度生まれてくるときは、人工衛星になって宇宙を回転するのが、私の夢です。いつか、空を見上げて想像してみてください。この私が、ワールドカップの衛星放送に貢献しているかもしれません。フレーフレー、サムライ・ブルー!フレーフレー、メイド・イン・ジャパン!」「…。」 20 年たまりにたまった告白は、まだまだ続きそうでした。
そこへピンポーンとチャイムが鳴って、取り付け工事のおじさんが2人、新しい洗濯機を抱えながらやってきました。ああよかった、助かった!「こんなに古くなるまで、よくがんばったもんだなあ。」 ホースを抜いて、持ち上げて、外に運び出して、入れ替えて…あっという間に取り付け完了です。「これが保証書です。ハンコお願いします。」「ハイ。ご苦労さま。」 玄関の外に出て、洗濯機を乗せた黄色いトラックを見送りました。古い洗濯機はどこへ行くんだろう…。聞いてみたい気もしましたが、忙しそうなのでやめました。
そのときです。御殿山の上のほうから大きな円盤が飛んできて、トラックの上に来たかと思うと、洗濯機がみるみる浮き上がっていくではありませんか。よく見ると、『SONY』とロゴの入った円盤でした。「ややや!こ、これはいったい?!」「私はこれからリサイクル星に行って生まれ変わる日を待ちます。よわこさん、またどこかでお会いしましょう。幸せな日々をありがとう。ティッシュをポケットに入れたまま洗濯しないように。さようなら~~~!」 洗濯機を乗せた円盤は、東京タワーをよけて、ピカッと光りながら灰色の雲の中へ吸い込まれていきました。
…やれやれ!機械を買い換えるのも、タイヘンなのね。

花のささやき

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 07th, 2010   Yowako  

よわこの日記77
今日も、わたしはよわこです。
ベランダの花たちが、今年もいっせいに咲きました。「よわこさん、一年ぶり。今年もお世話になります。」「はいはい。」…まるで民宿のおかみさんね。
わがままなバラが、黄色い花びらをふくらませながら言いました。「あたくし冷え性ですから、今度の冬は寒くて大変でしたわ。」するとラベンダーも、「なかなか晴れてくれないので、何度も風邪を引きそうになりました。」と、紫色の穂花を揺らしながら言いました。寒くても、季節がくるとちゃんと花を咲かせるのだから、植物はエライです。
ローズゼラニウムも、ピンクの花が満開です。 「冬が寒いほうが、あたくしたち綺麗に咲けますのよ。」「そうね、あたくしも。見てください、こんなにあざやかな黄色!」「とっても美しくってよ。」「あら、あなただって。うらやましいわ、素敵なピンク色。」
よかった。みんな仲よくしています。去年みたいに、花たちが喧嘩するのじゃないかって、わたしはビクビクしていました。とりこし苦労だったみたい。
「よわこさんは、まだお咲きにならないの?」「え?」「そうよ、そうよ、よわこさんまだなの?」「わたしはニンゲンだから咲きません。」そう答えると、「あら。人間も、お年頃になると花が咲くって聞いたことがあるわ。」「10代は青春の花ですってね。」「…わたしには関係ありません。」「かわいそうに、彼氏がいらっしゃらないのね。」…大きなお世話だ。
「みなさん、よわこさんが美しく花ひらくように、みんなで歌を歌ってさしあげましょう!」「そうしましょう!そうしましょう!」と、花たちが言いました。大きなお世話だっていうのに。
「『ローズガーデン』はどうかしら。」と、さいしょにバラが言いました。すると、「英語の歌はわからないわ。」と誰かが言いました。「じゃあ『バラが咲いた』は?浜口庫之助の名曲よ。」「バラさんたら、ご自分の歌ばっかり。あたくしは、『ラベンダー・レイン』がいいわ。」「あらラベンダーさん。『百万本のバラ』だってあるのに…。」 バラが不服そうに花びらをとがらせました。
そこへパンジーが、「『三色すみれ』も、阿久悠作詞のすばらしい曲よ。 ♪この花が届いたら~かけておいで~…ああ、いつ聞いても泣けるわ!」「桜田淳子ね。古い。Janne Da Arcの『カーネーション』にしよ。マジ、サイコーよ。」「カーネーションさん、私たちはビジュアル系バンドより、オーガニック・サウンドがいいです。私たちと同じ名前のカランコエが歌う、『おなじ空の下』とか。」「カランコエ?インディーズね。オホホ、聞いたことないわ。」「そういうゼラニウムさんは、ご自分の関係する歌がないのでしょう?お気の毒ね!」「まあ!…オホホ!なにおっしゃるの、ちゃ~んと歌ってるわよ美川憲一が!『ゼラニウムのある部屋』、YouTube検索なさって!」
ヤバイ、険悪なフンイ気だと思ったわたしは、「みんな平等に、『世界にひとつだけの花』はどうかしら。」と提案しました。 けれど、「スマップより松田聖子がいい!」とスイートピー、「『心の旅』がいい!」とチューリップ、「あたしは『くちなしの花』よォォ~!」とコブシを回したのは、もちろんクチナシ。「演歌ね、オヤジくさーい。」「財津和夫だってオヤジじゃない。」「なんだって!もういっぺん言ってごらん!」「○△×■▽☆▲!」
…もう手に負えません。そこへ母がやってきて、「宮原芽映の『ひまわり』はどう?」
やれやれ、…みんな勝手にしてください。

よわこの日記77
今日も、わたしはよわこです。
五月晴れなのに、心は晴れません。大好きなティム・バートンの映画『アリス・イン・ワンダーランド』を観に行くつもりだったのに、アイマックスのチケットが取れなかったのです。ちぇちぇちぇ! しかたないので、洗濯しました。洗濯機のフタを開けたら、洗濯モノがいっぱい。「ジーパンが泥だらけ…お母さんたら、また木登りしたのね。お父さんの靴下クサーイ!洗剤いっぱい入れちゃえ。」 家族全員の衣服をかき混ぜて、洗濯機がグィングィン回り始めました。と思ったら、あれ? ビーと鳴って、急に動かなくなりました。
「もう寿命ね。20年使ったんだもの。よく働いてくれたわ。」と母。…なんと。わたしより年上の洗濯機だったのか! 「どうしよう…。」「今日のところはコインランドリーを探すほかないな。調べてみよう。」 父がパソコン検索すると、シマヅヤマの女子大学近くに一軒ありました。今は何号機が稼動中で、残り運転時間があと何分か、パソコンでわかるんだって。きっとピカピカのハイテク・コインランドリーね!
そこはタバコ屋と中華料理屋に挟まれた、ちいさなちいさなコインランドリーでした。いつもなら、通り過ぎてしまったところ。ドアが開けっ放しなのに、『ノックすること』と貼紙があります。…ちょっとイバってる感じ。誰もいないけれど、ノックして中に入りました。湿った匂いがむーんとして、乾燥機がブンブン回る音がします。天井が低くて暗くて、ちっともハイテクじゃないみたい。折りたたみテーブル、アルミの灰皿、ゴミ箱、ビニールの椅子と木の椅子がふたつ、どちらもボロボロで座りたくない感じ。ヤカンやカゴや雑誌や使い古しの紙袋やゴミのようなものが山のように積み上げられていて、今にも崩れてきそう。
壁は貼紙でいっぱいです。手書きのマジックで、『紙袋は自由に使ってよろしい』『マンガ・雑誌は家に持ち帰ってよい。ただしあとで返却すること』『ここに缶やペットボトルを捨てないこと』とか、いちいち指示が書いてあります。オーナーは仕切りやさんかしら。『日本の古いことわざです。一、馬鹿の開けっ放し 二、馬鹿のやりっぱなし 三、のろまの三寸』というおかしな貼紙は、何枚も何枚も貼り付けてあります。フタを開けっ放しにする、マナーの悪い人が多いんだわ、きっと。
さあ、お洗濯しなくちゃ。洗濯機を開けたら…うそ!…ラッコです。回りながらお腹の上で貝を割っています。「開けっ放ししないで!貼紙が見えないの?」「す、すみません!」
あわててフタを閉めました。ああ驚いた。もしや、と思って乾燥機を覗いてみたら…回転するドラムの中を走る、リスと目が合いました。ウィンクしてます。ここはいったい?!
と、とにかく早く洗濯しなくては。となりの洗濯機をそーっと開けたら、よかった、空です。1回20分 250円とあります。コインを入れたら…タイヘン!洗濯機がガタガタふるえて店中が音を立てて、洗剤の泡はブクブク膨れあがり、週刊誌がいっせいにバサバサ鳩のように飛び回って、壁の貼紙が大合唱しはじめました。
「♪ おじょうちゃん~よ~くきけよ、にほんのふる~いことわざで~す、アソ~レ、ひと~つばかの~あけっぱな~し~、ほ~いほい、ふた~つばかの~やりっぱな~し~、ほ~いのほい、みっつのろまのさんずん~、ほいほいのほ~い」
耳ざわりなこの歌は、洗濯が終わるまでリピートしつづけました。その間、ヘンテコな山高帽をかぶったおじいさんが自転車で乗りこんできたり、大きなトラ猫がイモムシを追いかけて飛び込んできたり、コショウのビンが飛んできたり、卵が落っこちて割れたり、ウミガメが洗濯機の上でタップ・ダンスを踊ったり、ハリネズミが床を転がってきたり、まあ、にぎやかなこと。
20 分後に懐中時計を持ったウサギが入ってきて、「時間だよ!」と言いました。すると、みんなおとなしく外へ出て行きました。ウサギは、「開けっ放しにしたら、オーナーの女王様に首をちょん切られるよ!」そして「ああ忙しい!」と言いながら乾燥機の中に入っていきました。もちろん、フタはキチンと閉めて。
壁の貼紙が、「もう1曲どう?」と聞いたけれど、「結構です。」と断りました。こんなに騒々しいのはごめんだわ。洗濯モノはうちのベランダで干すことにしよう。
ワンダーランドは、別にアイマックスじゃなくても、どこにでも存在するのね。やれやれ!お父さんに早く洗濯機を買ってもらわなきゃ。