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われ泣きぬれて…

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 08 04th, 2010   Yowako  

よわこの日記80
今日も、わたしはよわこです。
7月は暑かったです。だからというわけではありませんが、期末テストはさんたんたるものでした。けど、わたしだけじゃなかったみたい。担任のオダワラ先生が、怖い顔をしてみんなに言いました。
「おまえらー、なんだこの成績は!こんなことだから、『ゆとらー』などと言われて世間からナメられんだぞ!罰として、夏休みに現国の特別授業を行うことにする。」「え~~~!」みんなから、不満の声があがりました。「先生、俺たち、ゆとらーじゃないっす。」「そうです、世間からなめられたって、幸せならいいと思いまーす。」「夏休み、バリ島行くんで出席できませーん。」「あら、すてき!うちはハワイよー。」「だ、だ、だ、だまれ~~~!だいたいおまえらは (長いので省略)」
というわけで、みんなそれぞれ文学作品の研究発表をすることになりました。わたしの課題は、『石川啄木の短歌を一首選んで、解説すること』です。どどどうしよう…。みんなの前で発表するなんて!
うちに帰ったら、新潟から親戚のナスおじいちゃんが泊まりに来ていました。「おじいちゃん、おひさしぶり。暑くて大変ね。」「あちこたねー。笹ダンゴこうて来らったぞ。よわこちゃんは、元気じゃったかえ?」「それが、じつは…」わたしは、気が重い研究発表のことを話しました。「ふむ。石川啄木は、立派なええ歌人じゃ!啄木といえば、これがもっとも有名じゃな。」
 
『東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる』
 
これならわたしも知っています。教科書にものってるし。でも、知らない人が書いた短歌を解説しろと言われても、どうしていいかさっぱり。斉藤和義の歌ならわかるんだけど…。「おじいちゃん、この人なんで泣いてるの?」「さあ~、ひでえ貧乏だったか、女にふられたのかも知れんの。」「たはむるってどういう意味?」「遊ぶという意味じゃろ。この歌は、大きな海の風景が、だんだん小さく絞り込まれてゆくのがミソじゃ。」「そうか!まるでカメラのズームインね。」「浜辺で泣いとるだけなら誰にでも書けるが、最後に蟹を出すことによってレアレテーが生まれる。」「れあれてい?…わかった!リアリティのことね。カニじゃなきゃダメなの?」「ウニとたわむれても絵にならんじゃろが。」「ヤドカリは?イソギンチャクは?」「そりゃ、字余りじゃ。」「たまたまそこにいたのが、七五調にぴったりの蟹だったなんて、できすぎてる気もする。」「嘘でもええんじゃよ。詩的真実と言ってな、創作に限って、嘘は心を伝えるための手段なのじゃ。」「なるほど。」「これも、啄木の有名な歌ぞ。」
 
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻としたしむ』
 
「… わたしはこっちのほうが好きかも。」「ほう。どんげして?」「うーん、なぜかわからないけど、リアリティを感じる。それに母がよく、『今日はパッとしないから』と言って、突然お花を買ってくることがあるわ。」「そりゃええ、そんなら、この歌を発表せえ。」…あとで検索してみたら、石川啄木という人はとても貧乏で、なのに、友達が一生懸命かき集めて貸してくれたお金で芸者さんと遊んだり、結構ヒドイ人だったみたいです。そんなことしていたら友達がみんな偉く見えて当たりまえです。おじいちゃんによると、昔の天才たちは、だっちもしねえ(どうしようもない)やぼこき(ワガママな人)も多かったんだって。ロック・ミュージシャンみたいなものかしら。

いよいよ発表の日。わたしの番がきました。ナスおじいちゃんのおかげで、わたしは自信を持って教壇にあがりました。ところが、「友がみな」の短歌を黒板に書くと、みんながクスクス笑い出しました。あれれ、なんでだ~?見ると、オダワラ先生が真っ赤になって怒っています。「お、お、おまえは、そんなことだからゆとらー…うう、もういいっ、席に戻れっ!」え。な、なんで?なんで怒ってるの?せっかく研究してきたのに…。黒板を見たら、わたしはこう書いていました。
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻とたはむる』
し、しまった!間違えた!「したしむ」と書いたつもりだったのに、先の2首が頭の中で合体してしまったのです。
あー恥ずかしい、啄木さん、ごめんなさい…。落ち込んで帰ったら、ナスおじいちゃんが「どうじゃった?」と聞くのでわけを話しました。「うぉーっほっほー!そりゃあええ、傑作じゃ!妻とたわむる…むふふ。啄木の歌より、レアレテーあるわい!」
おじいちゃんだけは、とても大喜びでした。…やれやれ!

よわこの日記79
今日も、わたしはよわこです。
ついに新しい洗濯機が、家にきます。古いのが壊れたので、きのう父とビックカメラで買いました。乾燥機付きの素敵な洗濯機がずら~っとならんでいましたが、父が「今までと同じ大きさじゃないと置けない」というので、結局それは1台しかなくて、迷うこともありませんでした。真っ白でシンプルだけど、カワイイ洗濯機です。
新しいものがくるのはワクワクします。けれど、そこにあってあたりまえだったものがなくなるのは、少しサビしい気がします。古い洗濯機は、わたしが生まれる前からずーっとそこにありました。白い色がすっかり黄ばんで、なんだかみすぼらしい。はじめはきっと新品だったのに、ずいぶん長い年月働いてきたんだもんね。よく見ると、こんなところにも傷が…。 イケナイ!じーっと見ていると、情が乗り移ってしまいそう!あわてて目をそらしましたが、遅かった。情が移ったとたん、洗濯機が喋りだしました。
「よわこさん、長いあいだお世話になりました。」「…いえいえ。こちらこそ。」「20年もの間、私はここの家に置いていただきました。思いおこせば、よわこさんのオムツカバーからはじまって、パンツ、幼稚園のうわっぱり、体操着、学生服のブラウス、ご愛用の黒いルーズソックスも、ご家族の思い出とともにくりかえしくりかえし、洗ってまいりました。」「やめて。そんなこと言ったら、お別れがつらくなるじゃないの。」「初めてのブラジャーを洗った日の感動は、今も忘れません。たしかサクランボの柄…」「や、やめてってば!」「よわこさんの成長は、ここでご奉公する私にとって、何よりも楽しみでした。ですが、これも浮世の常。さだめに背き、引き返すは恥。私は役目を終えて、ひっそり消えていきます。」 …まるで篤姫の乳母ね。ところが、洗濯機はなかなかひっそり消えてくれそうもありませんでした。
「私のことは忘れて、みなさんどうかお幸せに。」「わたしたちも、あなたのこと忘れないわ。」「…ありがとう。でも、気休めはやめてください。新しいものが来たら、私のことなんて、みなさんすぐにお忘れになるでしょう?」「そ、それは…。」 きっとそうだ、と、わたしも思いました。「『小惑星探査機はやぶさ』は、7年働いてみんなから注目されて消えていきましたが、私は20年働いたって誰からも注目してもらえません。しょせん家電は家電。スターにはなれないのです。」「はい…。」「今度生まれてくるときは、人工衛星になって宇宙を回転するのが、私の夢です。いつか、空を見上げて想像してみてください。この私が、ワールドカップの衛星放送に貢献しているかもしれません。フレーフレー、サムライ・ブルー!フレーフレー、メイド・イン・ジャパン!」「…。」 20 年たまりにたまった告白は、まだまだ続きそうでした。
そこへピンポーンとチャイムが鳴って、取り付け工事のおじさんが2人、新しい洗濯機を抱えながらやってきました。ああよかった、助かった!「こんなに古くなるまで、よくがんばったもんだなあ。」 ホースを抜いて、持ち上げて、外に運び出して、入れ替えて…あっという間に取り付け完了です。「これが保証書です。ハンコお願いします。」「ハイ。ご苦労さま。」 玄関の外に出て、洗濯機を乗せた黄色いトラックを見送りました。古い洗濯機はどこへ行くんだろう…。聞いてみたい気もしましたが、忙しそうなのでやめました。
そのときです。御殿山の上のほうから大きな円盤が飛んできて、トラックの上に来たかと思うと、洗濯機がみるみる浮き上がっていくではありませんか。よく見ると、『SONY』とロゴの入った円盤でした。「ややや!こ、これはいったい?!」「私はこれからリサイクル星に行って生まれ変わる日を待ちます。よわこさん、またどこかでお会いしましょう。幸せな日々をありがとう。ティッシュをポケットに入れたまま洗濯しないように。さようなら~~~!」 洗濯機を乗せた円盤は、東京タワーをよけて、ピカッと光りながら灰色の雲の中へ吸い込まれていきました。
…やれやれ!機械を買い換えるのも、タイヘンなのね。

花のささやき

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 07th, 2010   Yowako  

よわこの日記77
今日も、わたしはよわこです。
ベランダの花たちが、今年もいっせいに咲きました。「よわこさん、一年ぶり。今年もお世話になります。」「はいはい。」…まるで民宿のおかみさんね。
わがままなバラが、黄色い花びらをふくらませながら言いました。「あたくし冷え性ですから、今度の冬は寒くて大変でしたわ。」するとラベンダーも、「なかなか晴れてくれないので、何度も風邪を引きそうになりました。」と、紫色の穂花を揺らしながら言いました。寒くても、季節がくるとちゃんと花を咲かせるのだから、植物はエライです。
ローズゼラニウムも、ピンクの花が満開です。 「冬が寒いほうが、あたくしたち綺麗に咲けますのよ。」「そうね、あたくしも。見てください、こんなにあざやかな黄色!」「とっても美しくってよ。」「あら、あなただって。うらやましいわ、素敵なピンク色。」
よかった。みんな仲よくしています。去年みたいに、花たちが喧嘩するのじゃないかって、わたしはビクビクしていました。とりこし苦労だったみたい。
「よわこさんは、まだお咲きにならないの?」「え?」「そうよ、そうよ、よわこさんまだなの?」「わたしはニンゲンだから咲きません。」そう答えると、「あら。人間も、お年頃になると花が咲くって聞いたことがあるわ。」「10代は青春の花ですってね。」「…わたしには関係ありません。」「かわいそうに、彼氏がいらっしゃらないのね。」…大きなお世話だ。
「みなさん、よわこさんが美しく花ひらくように、みんなで歌を歌ってさしあげましょう!」「そうしましょう!そうしましょう!」と、花たちが言いました。大きなお世話だっていうのに。
「『ローズガーデン』はどうかしら。」と、さいしょにバラが言いました。すると、「英語の歌はわからないわ。」と誰かが言いました。「じゃあ『バラが咲いた』は?浜口庫之助の名曲よ。」「バラさんたら、ご自分の歌ばっかり。あたくしは、『ラベンダー・レイン』がいいわ。」「あらラベンダーさん。『百万本のバラ』だってあるのに…。」 バラが不服そうに花びらをとがらせました。
そこへパンジーが、「『三色すみれ』も、阿久悠作詞のすばらしい曲よ。 ♪この花が届いたら~かけておいで~…ああ、いつ聞いても泣けるわ!」「桜田淳子ね。古い。Janne Da Arcの『カーネーション』にしよ。マジ、サイコーよ。」「カーネーションさん、私たちはビジュアル系バンドより、オーガニック・サウンドがいいです。私たちと同じ名前のカランコエが歌う、『おなじ空の下』とか。」「カランコエ?インディーズね。オホホ、聞いたことないわ。」「そういうゼラニウムさんは、ご自分の関係する歌がないのでしょう?お気の毒ね!」「まあ!…オホホ!なにおっしゃるの、ちゃ~んと歌ってるわよ美川憲一が!『ゼラニウムのある部屋』、YouTube検索なさって!」
ヤバイ、険悪なフンイ気だと思ったわたしは、「みんな平等に、『世界にひとつだけの花』はどうかしら。」と提案しました。 けれど、「スマップより松田聖子がいい!」とスイートピー、「『心の旅』がいい!」とチューリップ、「あたしは『くちなしの花』よォォ~!」とコブシを回したのは、もちろんクチナシ。「演歌ね、オヤジくさーい。」「財津和夫だってオヤジじゃない。」「なんだって!もういっぺん言ってごらん!」「○△×■▽☆▲!」
…もう手に負えません。そこへ母がやってきて、「宮原芽映の『ひまわり』はどう?」
やれやれ、…みんな勝手にしてください。

よわこの日記77
今日も、わたしはよわこです。
五月晴れなのに、心は晴れません。大好きなティム・バートンの映画『アリス・イン・ワンダーランド』を観に行くつもりだったのに、アイマックスのチケットが取れなかったのです。ちぇちぇちぇ! しかたないので、洗濯しました。洗濯機のフタを開けたら、洗濯モノがいっぱい。「ジーパンが泥だらけ…お母さんたら、また木登りしたのね。お父さんの靴下クサーイ!洗剤いっぱい入れちゃえ。」 家族全員の衣服をかき混ぜて、洗濯機がグィングィン回り始めました。と思ったら、あれ? ビーと鳴って、急に動かなくなりました。
「もう寿命ね。20年使ったんだもの。よく働いてくれたわ。」と母。…なんと。わたしより年上の洗濯機だったのか! 「どうしよう…。」「今日のところはコインランドリーを探すほかないな。調べてみよう。」 父がパソコン検索すると、シマヅヤマの女子大学近くに一軒ありました。今は何号機が稼動中で、残り運転時間があと何分か、パソコンでわかるんだって。きっとピカピカのハイテク・コインランドリーね!
そこはタバコ屋と中華料理屋に挟まれた、ちいさなちいさなコインランドリーでした。いつもなら、通り過ぎてしまったところ。ドアが開けっ放しなのに、『ノックすること』と貼紙があります。…ちょっとイバってる感じ。誰もいないけれど、ノックして中に入りました。湿った匂いがむーんとして、乾燥機がブンブン回る音がします。天井が低くて暗くて、ちっともハイテクじゃないみたい。折りたたみテーブル、アルミの灰皿、ゴミ箱、ビニールの椅子と木の椅子がふたつ、どちらもボロボロで座りたくない感じ。ヤカンやカゴや雑誌や使い古しの紙袋やゴミのようなものが山のように積み上げられていて、今にも崩れてきそう。
壁は貼紙でいっぱいです。手書きのマジックで、『紙袋は自由に使ってよろしい』『マンガ・雑誌は家に持ち帰ってよい。ただしあとで返却すること』『ここに缶やペットボトルを捨てないこと』とか、いちいち指示が書いてあります。オーナーは仕切りやさんかしら。『日本の古いことわざです。一、馬鹿の開けっ放し 二、馬鹿のやりっぱなし 三、のろまの三寸』というおかしな貼紙は、何枚も何枚も貼り付けてあります。フタを開けっ放しにする、マナーの悪い人が多いんだわ、きっと。
さあ、お洗濯しなくちゃ。洗濯機を開けたら…うそ!…ラッコです。回りながらお腹の上で貝を割っています。「開けっ放ししないで!貼紙が見えないの?」「す、すみません!」
あわててフタを閉めました。ああ驚いた。もしや、と思って乾燥機を覗いてみたら…回転するドラムの中を走る、リスと目が合いました。ウィンクしてます。ここはいったい?!
と、とにかく早く洗濯しなくては。となりの洗濯機をそーっと開けたら、よかった、空です。1回20分 250円とあります。コインを入れたら…タイヘン!洗濯機がガタガタふるえて店中が音を立てて、洗剤の泡はブクブク膨れあがり、週刊誌がいっせいにバサバサ鳩のように飛び回って、壁の貼紙が大合唱しはじめました。
「♪ おじょうちゃん~よ~くきけよ、にほんのふる~いことわざで~す、アソ~レ、ひと~つばかの~あけっぱな~し~、ほ~いほい、ふた~つばかの~やりっぱな~し~、ほ~いのほい、みっつのろまのさんずん~、ほいほいのほ~い」
耳ざわりなこの歌は、洗濯が終わるまでリピートしつづけました。その間、ヘンテコな山高帽をかぶったおじいさんが自転車で乗りこんできたり、大きなトラ猫がイモムシを追いかけて飛び込んできたり、コショウのビンが飛んできたり、卵が落っこちて割れたり、ウミガメが洗濯機の上でタップ・ダンスを踊ったり、ハリネズミが床を転がってきたり、まあ、にぎやかなこと。
20 分後に懐中時計を持ったウサギが入ってきて、「時間だよ!」と言いました。すると、みんなおとなしく外へ出て行きました。ウサギは、「開けっ放しにしたら、オーナーの女王様に首をちょん切られるよ!」そして「ああ忙しい!」と言いながら乾燥機の中に入っていきました。もちろん、フタはキチンと閉めて。
壁の貼紙が、「もう1曲どう?」と聞いたけれど、「結構です。」と断りました。こんなに騒々しいのはごめんだわ。洗濯モノはうちのベランダで干すことにしよう。
ワンダーランドは、別にアイマックスじゃなくても、どこにでも存在するのね。やれやれ!お父さんに早く洗濯機を買ってもらわなきゃ。

ユー・ガッタ・フレンド?

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 25th, 2010   Yowako  

よわこの日記76
今日も、わたしはよわこです。
横浜でキャロル・キングとジェームス・テイラーのライブを見た父と母が、ゴキゲンで帰ってきました。わたしは、クアチとお留守番してました。「いっしょに行く!」って言ったのに、「今日はお父さんとデートだからダメ。」と母に断られたのです。ほんとうはチケット代が(1人15,000円)高かったからです。
ちぇ。帰りは中華街で食事したんだって。…オトナはずるい。
「もう~~~最高!前から6番目の席よ!目の前でふたりが歌っていたのよ!」
ジェームス・テイラーが歯の抜けたような声で歌いだしたとたん、母は涙が出たそうです。
ヒップ・ホップを聴いても絶対踊らない父が、キャロル・キングを聴いて一緒に踊ったそうです。 「だってオリジナル・メンバーだよ!40年位前、一緒に演奏していた人たちが、そのまま年とって演奏してんだよ!」「リーランド・スカラーのベースがすごかったわ!白いヒゲの仙人みたい。」「キャロル・キングは68歳だってさ。」「うっそー!私もあんなふうに素敵に年をとりたいわ!ジェームス・テーラーは、ハゲてもかっこいい!昔よりいいかも!」「……。」
わたしにはなんのことかさっぱりわかりません。
キャロル・キングもジェームス・テイラーも、父と母が小学生の頃ブレイクした人たちです。その時代アメリカはベトナム戦争をしていて、日本でも若い男の人は長髪にしぼりのTシャツを着て、女の人はエスカルゴ・スカートにトンボ・メガネをかけて、フォーク・ギターを弾きながら、「ラブアンドピース」とか言ってたそうです。
今では、客席も年配の人ばかり。みんなきちんとしたトラッドな服装で、金髪だったり鼻ピアスしているような人も、ほとんどいなかったらしい。クラシック・コンサートみたいに休憩時間があったり、スピーカーが目の前にあってドラム叩いてもぜんぜんうるさくなかったり…聞けば聞くほど不思議な感じ。
大好きな『ユー・ガッタ・フレンド』の歌が始まったとき、母は胸がキュンとして、思わず父の手をにぎりました。そうしたら一瞬、会ったことのない15歳くらいのお父さんと、手をつないだ気がしたんだって…。 「歌はタイムマシンね。前の列の、私よりもっと年上の男性が、メガネをはずして涙を拭いていたわ。彼もきっと、10代の自分に会っていたのよ。思わずもらい泣きしたわ。」 そのとき、横浜パシフィコの観客席につめかけていた何千ものおじさんたちの魂は、全員長髪で、しぼりのTシャツ姿だったかもしれません。
わたしはふいに、父や母や、年をとった人たちが、うらやましくなりました。これって、おばあちゃんが石原裕次郎聴いてうっとりしているのと、ちっとも変わらないと思う。40年近くもの間、時間が止まってる感じ。蝶ちょをピンで留めるみたいに、青春を止めてしまう力。…といっても標本になるのじゃなく、心の中に刺さったまま、いっしょに育っていく何か。
今のわたしが、父や母の年になったときはどうなんだろう? わたしの時間を止めてしまうくらい、衝撃的なものって? 大勢の見知らぬ人たちと、感動と時間を共有できるものってなんだろう?
…ヤバイ。40年後、わたしはポケモン見て涙を流しているかもしれない。
「あーしあわせ!よわこにも見せたかったわ!ねーお父さん?」「うん。」 …やれやれ!オトナはいい気なもんです。

のらぼうな

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 10th, 2010   Yowako  

よわこの日記75
今日も、わたしはよわこです。
母方のおばあちゃんから、電話がきました。「ノラボーナがいっぱいあるから、お昼に食べにおいで。」 …ノラボーナってなに? イタリア料理? カルボナーラの一種? トスカーナ地方の名産とか? …よくわかんないけど、父も母も仕事なので、ひとりで電車に乗ってオオクラヤマに行きました。
おばあちゃんのマンションに行くと、台所が緑色。テーブルもシンクもレンジも葉っぱだらけ。「どどどうしちゃったの、おばあちゃん!」「近くの八百屋さんで売ってたの。『のらぼう菜』…珍しいでしょ。懐かしくて、つい。」 ノラボーナの正体は、アブラナに似た大きな菜っぱでした。なーんだ。イタリア料理じゃなくてがっかり。 「田舎にいる頃、ひいおばあちゃんがよく食べさせてくれたのよ。」「ふうん。」
おばあちゃんの故郷はヒノハラ村。東京のいちばん西の、東京と思えないのどかな山の中です。はじめて行ったとき、緑の匂いがむんむんして、小さかったわたしは外国に来たかと思いました。のらぼう菜はそのあたりに伝わる野菜。寒さに強く、冬のあいだ育って春のお彼岸のころ収穫するので、『春を告げる野菜』と呼ばれているそうです。それにしてもこんなにたくさん買うなんて、おばあちゃんよっぽど懐かしかったのね! 「今年の冬は寒かったからね。冬が寒いと野菜は甘く育つんだよ。」「へえ~、そうなんだ。」 お昼は、のらぼう菜のおひたし、胡麻和え、炒め物、てんぷら、お吸い物…のらぼうなづくしでした。味は菜の花に似てるけれど苦くないし、ほうれん草ほど甘くない。クセがなくてけっこういけるかも。
食べながら、亡くなったひいおばあちゃんのことを思い出しました。杉の木に囲まれたおうちで、テレビのお相撲を見てたひいおばあちゃんは、ぺちゃんこの座布団の上に100年前から座ってる木彫りのお人形みたいでした。生きてるだけで、スゴイと思った。そうかと思うと、突然ニヤッと笑って「貴乃花はいい男だねえ~。」とか言うからびっくり。…ひいおばあちゃんから伝わってきた味だと考えると、のらぼう菜もなんだか特別な感じがします。 「のらぼう菜はガンコな野菜でね、遺伝子組み替えたり、ほかの菜っ葉と交配できないんだって。だからいつまでものらぼう菜のまま。これ食べたら、きっとよわこちゃんも強くなるよ。」「うん。」
帰りの電車から、ぼんやりおぼろ月が見えました。『菜たね月』です。寒いと思っていたら、いつのまにか春なのね。あ~お腹いっぱい!やれやれ、今夜は緑色の夢を見るかもしれない。

やぎさんゆうびん

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 01st, 2010   Yowako  

よわこの日記74
今日も、わたしはよわこです。
トモコちゃんのように、人並はずれた能力があっても生かす場所のないヒトって、実はたくさんいるのかも。学校で今流行ってるドラッカーの名言集にも、「卓越した者の能力や仕事ぶりが、まわりの者を不安にさせたり障害になるのは、組織にとって深刻なモンダイだ」 みたいなことが書いてありました。これってきっと、大きなリュックサックをしょって満員電車に乗ってる感じだと思う。リュックの中には役に立つものや、素敵なものが詰まっているのに、自分では使えないし、まわりからは迷惑なものにしか見えないんだわ。だったら、組織とかじゃなくて、もっと広いところに行けば能力をハッキできるのではないかしら。トモコちゃんにも、そんな場所があるといいのに。

… ところで。わたしの能力って何だろう? 考えたけれど、何も思いつきません。 わたしって何も持ってないヒトなのかしら…だんだん不安になってきました。
「わたしの能力って、何だと思う?」 母に聞いたら、「素直でいい子なこと。」と言いました。父に聞いたら、「疲れたとき、背中を押してくれること。」と言いました。ちぇ。おとうさんもおかあさんも、自分たちに都合いいことばっかり!
冬眠から目覚めたばかりの、ヤモリのゲコに聞いてみました。 「わたしの能力って、何だと思う?」「きみにとって?ぼくにとって?家族にとって?組織にとって?社会にとって?人類にとって?地球にとって?それとも全宇宙にとって?」「うーん、…ぜんぶ!」「そりゃあ無理だ。」「なぜ?」「自分にとっての能力が、他人にとってはそうじゃないこともある。ぼくにとってきみの能力は、じっとして僕をふみつぶさないこと。」 …ゲコも同じこと言ってる。そして大きなアクビをしながら、「生物はみな、ただ生きていることが能力だ。」と言いました。 そうか…。だけど、『わたしの能力は、ただ生きていることです』じゃ、何をしていいかわからないし、自慢できないじゃない…。
次の朝、玄関のポストに白い封筒が入っていました。封筒の上には、こんなメッセージが印刷されていました。
『よわこ様 この中に君が求めている答えがある。だが答えは自分で探し出してこそ価値があるものだ。ゆえに、これは君がおとなになるまで開けてはいけない。しかるべきときがきたら、開けること。 能力の神より』
なにこれ…おとうさんのいたずらだわ、きっと!開けるなと言われると開けたくてたまりません。どんな答えなんだろう…わたしはあっさり封を切りました。中にA4サイズのコピー用紙が折りたたんで入っています。 「どれどれ、しろやぎさんからお…なななんだこれは!」 そこに書かれていたのは、まどみちおさん作詩の『やぎさんゆうびん』の歌詞でした。
 
しろやぎさんからおてがみついた
くろやぎさんたらよまずにたべた
しかたがないのでおてがみかいた
さっきのてがみのごようじなあに?
 
これが答え?…さっぱりわかんない。やれやれ!

ワイルドでいこう!

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 04 01st, 2010   Yowako  

よわこの日記73
なんか、、、 
ゲームとか、ケイタイとかで、指の体操して満足してるクラスメイトが信じられない。
みんなヒマなの、わかるけど、、、 ケイタイにつぶやいたからってどうなの?
みんな、寂しんぼーだから、みんなで同じ事して、指を動かしてれば安心なのね。 
きっと、、、
指の体操するぐらいならバイクとばして、全身で風を感じるわ。眠っていたワイルドがよみがえる感じ。というか本当は生まれつき、ワイルド! ぐちぐち、くよくよ、なんて関係ない。
地球ごとぶっ飛ばしてやる!
 
なんか、、、 今日はぐれこ。