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よわこのナミビア日記 ⑧

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 12 28th, 2008   Yowako  

よわこの日記 46
今日も、わたしはよわこです。
ナミビアには黒人のひとがいっぱいいますが、ペンディさんはほかのひととちょっと違います。誰よりも静かで、恥ずかしがりやみたい。いつも清潔そうなシャツとコットンパンツで、38歳って聞いたけど高校生くらいに見えます。「今まで何人もの現地ドライバーを雇いましたが、彼ほど優秀な青年はいませんでした。」 …一緒に旅行しているラルフおじさんが言ってます。ラルフさんは旅行好きで行ったことのない国が世界に2つしかないという人だから、きっと本当です。ペンディさんが愛用の携帯はノキア。今回のギャラを貰ったら新機種を買うそうです。趣味はパソコン。「ペンディさんも子どものころ、お友達とテレビゲームやって遊んだの?」聞いたら、村にはゲームなんてなかったから、外で遊んだそうです。ある日川で遊んでたら、仲よしのお友達が目の前でワニに食べられちゃったんだって! …ひええええ。
ナミビアにきてから、気になることがひとつありました。レストランに入ると、経営者とお客さんはみんな白いひと、働いてるのはみんな黒いひと。はっきり分かれています。わたしは学校で習った「植民地」という言葉を思い出しました。ペンディさんがわたしたちと同じテーブルで食事してると、変な顔でじろじろ見るのは白人よりむしろ黒人のひとたちでした。中には露骨に意地悪を言うウェイターもいました。きっと焼もちをやいているのです。同じ色の人に意地悪されるのは、違う色の人にされるよりもっと悲しいはずです。けれど、ペンディさんは困った顔して笑っただけで、別に気にしない様子でした。わたしだったらくやしくて下を向いてしまうのに、ペンディさんはエライと思う。
スワコップムンドの町で、わたしたちは高級ホテルのレストランに入りました。お客さんはみんな、ヨーロッパからきた上流のお金持ち風の人ばかり。わーい素敵!まるでお嬢様になった気分!「こういう店でペンディさんが私たちと一緒にテーブルにつくなんて、昔は考えられなかったことです。」と、ラルフおじさんが言いました。 「ペンディさんが、今は人種差別されなくてよかったね。」母に言うと、「そうね。あたしたちも昔は差別の対象だったんだもの。」 ……え?!それってどういうこと? …ガーン!そうか!考えもしなかった!わたしも有色人種で差別される側だったんだ! …お嬢様から没落した気分。「だいじょうぶ。ここはインターナショナル・テーブルですから。」と、ラルフさんが笑いました。座っているのは白人のラルフさんと東洋人の妻タカコさん、母、黒人のペンディさん。わたしはまわりを見渡して、自分たちのインターナショナル・テーブルが、レストラン中でいちばん素敵なテーブルだと思いました。
その夜、わたしはペンディさんに大鳥神社の厄除けお守りをあげました。旅の記念です。ペンディさんはお返しに小さなペットボトルを差し出しました。なんだろう …中に大西洋の海水が入っています。「僕の村ではこれは魔法の水。玄関にぶら下げると魔物が入ってこられないんだ。」へえ~お塩で清めるのと同じかも… 「ペンディさん、ありがとう!大切にするわ!」次の朝起きたら、なななななんと!ペット・ボトルが空っぽです。これはいったい?!「おかあさん!魔法の水が消えちゃった!」
「ごめん。飲んだらしょっぱいから捨てた。」「  ……。」
やれやれ。しかたないので、ボトルだけ記念に持って帰ることにしました。