次の朝も、わたしは「よわこ」でした。
部屋の中はいつも通りだし、昨日あんなに驚いていたクアチは、何もなかったようにごはんを食べ、いびきをかいて寝ています。こうやって「異常な出来事」は、あっさり「普通のこと」になっていくんだと思う。けれど、今度は何もなかったようだった父と母に異変がありました。二人の顔に「よわこのしるし」が・・・、くちばしがあるではありませんか!いつもはボサノバの好きな陽気な母が、突然悲しげに言いました。「あたしは42年間も生きて、いったい何をしてきたっていうんだろう・・・?!」そしてギターを手に取り、中川五郎の「90センチ」を泣きながら歌いはじめたのです。「おとうさん、おかあさんだいじょうぶかしら?」「落胆している割には5才もサバを読んでいるくらいだから、きっと大丈夫・・・」そう言う父も、みるみる小さくなって、真っ黒い子猫ちゃんになって、机の下でのどをぷるぷる鳴らしています。やれやれ、これから先どうなってしまうやら・・・考えるとよわこ指数がどんどん上がりそうなので、とりあえず今日のところは寝てしまうことにします。