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われ泣きぬれて…

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 08 04th, 2010   Yowako  

よわこの日記80
今日も、わたしはよわこです。
7月は暑かったです。だからというわけではありませんが、期末テストはさんたんたるものでした。けど、わたしだけじゃなかったみたい。担任のオダワラ先生が、怖い顔をしてみんなに言いました。
「おまえらー、なんだこの成績は!こんなことだから、『ゆとらー』などと言われて世間からナメられんだぞ!罰として、夏休みに現国の特別授業を行うことにする。」「え~~~!」みんなから、不満の声があがりました。「先生、俺たち、ゆとらーじゃないっす。」「そうです、世間からなめられたって、幸せならいいと思いまーす。」「夏休み、バリ島行くんで出席できませーん。」「あら、すてき!うちはハワイよー。」「だ、だ、だ、だまれ~~~!だいたいおまえらは (長いので省略)」
というわけで、みんなそれぞれ文学作品の研究発表をすることになりました。わたしの課題は、『石川啄木の短歌を一首選んで、解説すること』です。どどどうしよう…。みんなの前で発表するなんて!
うちに帰ったら、新潟から親戚のナスおじいちゃんが泊まりに来ていました。「おじいちゃん、おひさしぶり。暑くて大変ね。」「あちこたねー。笹ダンゴこうて来らったぞ。よわこちゃんは、元気じゃったかえ?」「それが、じつは…」わたしは、気が重い研究発表のことを話しました。「ふむ。石川啄木は、立派なええ歌人じゃ!啄木といえば、これがもっとも有名じゃな。」
 
『東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる』
 
これならわたしも知っています。教科書にものってるし。でも、知らない人が書いた短歌を解説しろと言われても、どうしていいかさっぱり。斉藤和義の歌ならわかるんだけど…。「おじいちゃん、この人なんで泣いてるの?」「さあ~、ひでえ貧乏だったか、女にふられたのかも知れんの。」「たはむるってどういう意味?」「遊ぶという意味じゃろ。この歌は、大きな海の風景が、だんだん小さく絞り込まれてゆくのがミソじゃ。」「そうか!まるでカメラのズームインね。」「浜辺で泣いとるだけなら誰にでも書けるが、最後に蟹を出すことによってレアレテーが生まれる。」「れあれてい?…わかった!リアリティのことね。カニじゃなきゃダメなの?」「ウニとたわむれても絵にならんじゃろが。」「ヤドカリは?イソギンチャクは?」「そりゃ、字余りじゃ。」「たまたまそこにいたのが、七五調にぴったりの蟹だったなんて、できすぎてる気もする。」「嘘でもええんじゃよ。詩的真実と言ってな、創作に限って、嘘は心を伝えるための手段なのじゃ。」「なるほど。」「これも、啄木の有名な歌ぞ。」
 
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻としたしむ』
 
「… わたしはこっちのほうが好きかも。」「ほう。どんげして?」「うーん、なぜかわからないけど、リアリティを感じる。それに母がよく、『今日はパッとしないから』と言って、突然お花を買ってくることがあるわ。」「そりゃええ、そんなら、この歌を発表せえ。」…あとで検索してみたら、石川啄木という人はとても貧乏で、なのに、友達が一生懸命かき集めて貸してくれたお金で芸者さんと遊んだり、結構ヒドイ人だったみたいです。そんなことしていたら友達がみんな偉く見えて当たりまえです。おじいちゃんによると、昔の天才たちは、だっちもしねえ(どうしようもない)やぼこき(ワガママな人)も多かったんだって。ロック・ミュージシャンみたいなものかしら。

いよいよ発表の日。わたしの番がきました。ナスおじいちゃんのおかげで、わたしは自信を持って教壇にあがりました。ところが、「友がみな」の短歌を黒板に書くと、みんながクスクス笑い出しました。あれれ、なんでだ~?見ると、オダワラ先生が真っ赤になって怒っています。「お、お、おまえは、そんなことだからゆとらー…うう、もういいっ、席に戻れっ!」え。な、なんで?なんで怒ってるの?せっかく研究してきたのに…。黒板を見たら、わたしはこう書いていました。
『友がみな 我より偉く見ゆる日よ 花を買いきて 妻とたはむる』
し、しまった!間違えた!「したしむ」と書いたつもりだったのに、先の2首が頭の中で合体してしまったのです。
あー恥ずかしい、啄木さん、ごめんなさい…。落ち込んで帰ったら、ナスおじいちゃんが「どうじゃった?」と聞くのでわけを話しました。「うぉーっほっほー!そりゃあええ、傑作じゃ!妻とたわむる…むふふ。啄木の歌より、レアレテーあるわい!」
おじいちゃんだけは、とても大喜びでした。…やれやれ!