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よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 25th, 2010   Yowako  

よわこの日記79
今日も、わたしはよわこです。
ついに新しい洗濯機が、家にきます。古いのが壊れたので、きのう父とビックカメラで買いました。乾燥機付きの素敵な洗濯機がずら~っとならんでいましたが、父が「今までと同じ大きさじゃないと置けない」というので、結局それは1台しかなくて、迷うこともありませんでした。真っ白でシンプルだけど、カワイイ洗濯機です。
新しいものがくるのはワクワクします。けれど、そこにあってあたりまえだったものがなくなるのは、少しサビしい気がします。古い洗濯機は、わたしが生まれる前からずーっとそこにありました。白い色がすっかり黄ばんで、なんだかみすぼらしい。はじめはきっと新品だったのに、ずいぶん長い年月働いてきたんだもんね。よく見ると、こんなところにも傷が…。 イケナイ!じーっと見ていると、情が乗り移ってしまいそう!あわてて目をそらしましたが、遅かった。情が移ったとたん、洗濯機が喋りだしました。
「よわこさん、長いあいだお世話になりました。」「…いえいえ。こちらこそ。」「20年もの間、私はここの家に置いていただきました。思いおこせば、よわこさんのオムツカバーからはじまって、パンツ、幼稚園のうわっぱり、体操着、学生服のブラウス、ご愛用の黒いルーズソックスも、ご家族の思い出とともにくりかえしくりかえし、洗ってまいりました。」「やめて。そんなこと言ったら、お別れがつらくなるじゃないの。」「初めてのブラジャーを洗った日の感動は、今も忘れません。たしかサクランボの柄…」「や、やめてってば!」「よわこさんの成長は、ここでご奉公する私にとって、何よりも楽しみでした。ですが、これも浮世の常。さだめに背き、引き返すは恥。私は役目を終えて、ひっそり消えていきます。」 …まるで篤姫の乳母ね。ところが、洗濯機はなかなかひっそり消えてくれそうもありませんでした。
「私のことは忘れて、みなさんどうかお幸せに。」「わたしたちも、あなたのこと忘れないわ。」「…ありがとう。でも、気休めはやめてください。新しいものが来たら、私のことなんて、みなさんすぐにお忘れになるでしょう?」「そ、それは…。」 きっとそうだ、と、わたしも思いました。「『小惑星探査機はやぶさ』は、7年働いてみんなから注目されて消えていきましたが、私は20年働いたって誰からも注目してもらえません。しょせん家電は家電。スターにはなれないのです。」「はい…。」「今度生まれてくるときは、人工衛星になって宇宙を回転するのが、私の夢です。いつか、空を見上げて想像してみてください。この私が、ワールドカップの衛星放送に貢献しているかもしれません。フレーフレー、サムライ・ブルー!フレーフレー、メイド・イン・ジャパン!」「…。」 20 年たまりにたまった告白は、まだまだ続きそうでした。
そこへピンポーンとチャイムが鳴って、取り付け工事のおじさんが2人、新しい洗濯機を抱えながらやってきました。ああよかった、助かった!「こんなに古くなるまで、よくがんばったもんだなあ。」 ホースを抜いて、持ち上げて、外に運び出して、入れ替えて…あっという間に取り付け完了です。「これが保証書です。ハンコお願いします。」「ハイ。ご苦労さま。」 玄関の外に出て、洗濯機を乗せた黄色いトラックを見送りました。古い洗濯機はどこへ行くんだろう…。聞いてみたい気もしましたが、忙しそうなのでやめました。
そのときです。御殿山の上のほうから大きな円盤が飛んできて、トラックの上に来たかと思うと、洗濯機がみるみる浮き上がっていくではありませんか。よく見ると、『SONY』とロゴの入った円盤でした。「ややや!こ、これはいったい?!」「私はこれからリサイクル星に行って生まれ変わる日を待ちます。よわこさん、またどこかでお会いしましょう。幸せな日々をありがとう。ティッシュをポケットに入れたまま洗濯しないように。さようなら~~~!」 洗濯機を乗せた円盤は、東京タワーをよけて、ピカッと光りながら灰色の雲の中へ吸い込まれていきました。
…やれやれ!機械を買い換えるのも、タイヘンなのね。