あちこたねぇ
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宮原芽映
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クアチが行方不明

よわこの日記 ARCHIVE   Posted on 06 25th, 2009   Yowako  

よわこの日記58
今日も、わたしはよわこです。
学校から帰ったら、猫のクアチがいません。いつもなら、玄関にトコトコ迎えにくるのに。どこかで、すねて隠れているのかしら?前回の日記で、クアチがアルマーニを食べちゃったと思ったわたしが、「クアチのバカ!おまえみたいな食いしん坊は、もうつきあいきれないわ!」と、きつく怒ったのです。
「クアチ~、ごはんだよ~。」優しい声で呼んだけれど出てきません。大好きなカツオ節の袋を振って、シャカシャカ鳴らしましたが、出てきません。これは絶対おかしい!…もしかしたら、家出しちゃったのかも!どうしよう…こういうときは冷静に考えなくては…家出なら書きおきがあるはず。どこかに書きおきはないかしら?足もとを見ると、クアチのお皿の上にびっしょり濡れた雑巾がかぶせてありました。「これは…… 『ぬれぎぬ』って意味だわ!やっぱり!」
クアチが家出したと思い込んだわたしは、急いで探しにでかけました。「クアチーー!クアチーー!」呼びながら家のまわりをぐるぐる回って、五反田から大崎、品川駅まで歩いてもどってきましたが、見つかりません。うそ~。今まで外に出たことなんてないのに、クアチ、いったいどこに行っちゃったの?
日が暮れてきました。すぐそばの駐車場でカラスがギャアギャア鳴いています。夕暮れどきって、なんて心細くてイヤな時間なんだろう。暗くなって、車に轢かれたらどうしよう…いいえ、そんなこと絶対ないわ!クアチのばか。もう二度と会えないかもしれない…そんなことはないと何度打ち消しても、心配で涙がこぼれました。昨日まであたりまえに毎日一緒にいたのが、これで永遠に会えなくなるなんて…、幸せが壊れるのって、薄焼きせんべいみたいに簡単なものなのね。
頭の中を、思い出が逆回転で再生されました。クアチは5年前、駐車場の車の下にうずくまっていました。野良猫同士で喧嘩して、逃げ込んできたのです。顔中傷だらけで、ウーウーうなっていました。あのとき、わたしがカツオ節をてのひらに乗せてそっとさしだしたら、車の下からおそるおそる出てきて、カツオ節の袋ごとくわえて、がつがつ食べたんだったわ。…そうだ!
わたしは駐車場に入りました。金網を包囲するように、カラスがずらりと並んでいます。夕食の獲物を見はってるみたい。わたしはよつんばいになって、車の下をのぞきこみました。…いました。デブのクアチが、小さくなって震えています。こんなに弱々しいクアチを見るのは初めて。家ではイバっていても、外ではひよわなお坊ちゃまなのね。「うたがってごめんね。一緒に帰ろう。」「……ふにゃああああ!」クアチはわたしの胸に飛びつきました。家に入ると、カツオ節を袋ごとがつがつ食べて、いつものようにパソコンのキーボードの上にかぶさってぐーぐー寝てしまいました。
なんのことはない、家からたった8メートルくらいの家出でした。ああよかった。やれやれ!安心したら、なんだかだまされたような気分。…幸せって、そういうものかしら。